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雨上がりのアスファルト上、スキップの振動が音に変わり響く。
「お兄ちゃん、宿題教えて!」
「どんな宿題?」
「あのね、水たまりの色は何色か調べる宿題」
雨合羽姿の彼女は、目の前のそれに視線を落とす。
(難しい宿題だなぁ)
雲間から注ぐ午後二時の太陽光が、水たまりに反射してきらきらと煌めいていた。困ったことに僕が歩を進めるその都度、それの色はくるくると変わる。
「水たまりは空の色なんだよ」
格好イイこと言っちゃったよ。どこかの誰かの受け売りなんて、夢も何もあったもんじゃないのにさ。
それでも……
「そっか! やっぱりお兄ちゃんて頭いいね!」
――彼女は微笑む。
なんとなく恥ずかしい気分になった僕は「雨、もう止んでるよ」と言って、雨合羽のフードをとってやる。くりっと無垢な双眸が露わになった。すると太陽光を受けてか、はたまた違う何かを映したか……きらきらと煌めいた。
(水たまりの色、いつか分かるといいな)
「帰ろうか?」
「うん、宿題終わったから遊ぼうね!」
よっしゃ、暇だから兄ちゃんが遊んでやろう。
僕らは手を繋ぐ。それから大きな水たまりを、せーので飛び越えた。
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