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小さなちゃぶ台の上に、コンビニで買ってきた缶ビールとおつまみを並べて準備は完了!
「恋愛モノが観たいだなんて、珍しいじゃん」
あたしはDVDをプレーヤーにセットして、電気を消す。
「まぁね。いんじゃねーの。たまにはさ」
彼は素っ気なく言うけど、あたしにはお見通しなのだ。頭の中では邪な考えが渦巻いている! 付き合い始めて今日で3年――あなたの気持ちが手に取るように分かるよ。馬鹿じゃん。あたしは暗がりに便乗して思わずにやけてしまう。……おっと、再生再生っと。
今夜はなんとなく、字幕の気分。ということは、きっと彼もそうなんだろうな。
映画はレンタル開始からまだ間もない最新作だ。ヒロインはとびっきりの美女で、でもある日突然、恋人が病気で死んでしまう――そんな彼女に、死んでしまった彼から、彼女を励ます手紙が届く……といったストーリー。
残念でしたーえっちなシーンなんてありませんよっと。あたしが密かにほくそ笑んでいると、彼の舌打ちが聞こえた気がした。
「ねぇ、あのさ、あたしが死んだら、ちゃんと前を向いて生きていってくれる?」
あっという間の2時間を経て、エンドロール。素敵ストーリーに思いっきり感化されたあたしはとびっきりスイーツな台詞を吐いた。言ったあとで死にたくなった。
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