8人が本棚に入れています
本棚に追加
「やだ。もしお前がいなくなったら俺、生きていけな」「ア゛ー……」
彼も感化されたようです。
「……お前から振っといてひどくね?」
嘘だよ。嬉しいよ。大好きだよ。寂しくなるから、絶対言わないけど。
あたしたちは軽く映画の感想を交わすと、無言になった。彼から「それじゃあ」と切り出し、あたしが「うん、おやすみ」と言う。それは、名残惜しい電話を切る為の……いつもの合図。
付き合って3年。内訳、近距離恋愛1年。同棲生活1年と3ヶ月。遠距離恋愛7ヶ月。
今日迎えた記念日についてはお互い触れなかった。多分彼もあたしも、電話を切った後の静けさが、たまらなく嫌いなんだ。
週末にはいつも仕事帰りに駅で待ち合わせ、二人で映画を借りて帰った。その習慣は離れても変わらない。あたしがTUTAYAで彼がGEO。そんな些細な違いだけ。
DVDのメニュー画面が暗闇に浮かんでいた。映画を観た後って、ちょっと切ないよ。今あたしの隣に、あなたがいたらいいのに……。またしても一人で恥ずかしいことを考えていると、携帯が震えた。グリーンのライトが、彼からのメールだと教えてくれる。
むむ……珍しすぎて開くのが恐いぞ。いつもはのび太くんに匹敵する寝付きの良さなのに、何だろう。
あたしはドキドキしながら、彼からのメールを開いた。
「……!」
あたしは一生この時の気持ちを忘れないだろうと瞬時に悟る。
メールで、言う台詞じゃないし。しかもさっきの電話で、言い忘れるとか有り得ない。だけど、ふてぶてしい位素っ気ない文面にはしっかりと彼の気持ちがこもっていて、あたしは死ぬほど嬉しくて……うん。一週間くらい不眠症になるよ多分。どうしてくれようか。
ねぇ今すぐに会いたい。海も空も飛び越えられそうな気分だよ。それから会ったら、渾身のタックルをかましてやるんだ!
――もちろん! 今世紀最大級の愛をこめて。
最初のコメントを投稿しよう!