人身売買

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そろそろ肌寒くなってきた10月の中旬。 近くの県立高校に通う僕は、何時もどおり友人と別れてから家のなかに入った。 見慣れた家、何時もと違うのは、母親がいないことくらいだ。 お母さん、買い物にでも行っているのかな? 部屋に入った僕は、めんどくさいと思いながらも宿題を済ませ、一応明日の予習をしていた。 すると突然玄関のドアが乱暴に開き、バタバタと沢山の足音が聞こえてきた。 お母さん、荷物が多くて困ってるのかもしれない。 そう思って部屋から出て、玄関へと向かう。 そこに居たのは、お母さんの再婚相手のお義父さんと、スーツを纏った三人の男の人たちだった。 「…………」 お客さんかな… ここにいては邪魔かと思って部屋へ引き返そうとする僕を、お義父さんは引き留めた。 「おい、裕也。 お客さんに挨拶もなしか。 お前、ちょっとこっち来い」 「あ…はい…」 ゆっくりと玄関へと向かう。 正直、僕はお義父さんが苦手だった。 毎日飲んで帰って来ては、お金がない、お前を養ってるからだと叫ぶ。 口答えをしようものなら、口が利けなくなるまで殴られた。 スーツを纏った三人の内の一人が、まじまじと僕を見つめる。 居心地が悪くて、僕は少し後ずさった。 「挨拶しろって言ってんだよ!」 急に怒鳴って僕の腕を掴んだお義父さんに、反射的に身を堅くする。 そんなお義父さんに、スーツの一人が笑って見せた。 「まぁまぁ、綾瀬さん。まだ高校一年生なんでしょう? あまり乱暴にしたら可哀想ですよ」 「そうですね、あの、言うことを聞かないもんで」 途端に、お義父さんの態度が一変する。 それだけで、この三人はお義父さんより立場が上で、多分金融関係の人だと大体わかった。  
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