人身売買

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「綾瀬裕也くん、だよね? お父さんからよく話を聞いてるよ。 本当に、すごく可愛い子だ」 「あ、の…はい」 にっこり笑われて、一瞬戸惑う。 お義父さんが僕のことを可愛いなんて、絶対言わないと思ってたから。 曖昧に笑うと、男の人は破顔してからお義父さんに向き直った。 「この子はかなり売れますよ。 あなたの息子ですからね、期待してませんでしたが。 血が繋がってないだけあって、全く似てない。 いや、これで命拾いしましたね」 「ほ…本当ですか!」 僕には意味のわからない男の人の言葉に、お義父さんは大喜びする。 本当に嬉しそうに、スーツの三人に頭を下げた。 「ありがとうございます! 使い方はご自由にどうぞ、臓器でも、肉奴隷でもなんでも! さぁ、どうぞ持っていって下さい」 何の事を言っているのか分からなかった。 ニヤリと笑ったスーツの人に、白いハンカチで口を押さえつけられる。 遠のいていく意識の中、僕はぼんやりと理解した。 ―――あぁ、さっきの会話は、僕のことだったんだ… 四人は、僕を「売る」話をしてたんだ。 ずっと縁遠かった異国の話。 人身売買―――… 初めてその現場を目の当たりにしたのは、皮肉にも自分が「商品」となった瞬間だった。  
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