立ち尽くす男

2/3
前へ
/15ページ
次へ
 ふぁーくしょい!  うーっ、寒い。あーっ、なんか風邪をひきそうな気がする。まだかなあ。  久しぶりの待ち合わせだというのに、竜太は晩秋の強く冷たい風に容赦なくさらされていた。  とてもじっとしてはいられない。時計台の下をぐるぐる回りながら待ち続けた。じっとしていては身体が冷えてしまうからだ。  うううっ、コートを着て来るべきだったかなあ。  ブルゾンの浅いポケットに手を突っ込んで足踏みをしながら更に竜太は待ち続けた。時折、時計を見上げ、目を凝らして時刻を確かめる。そうして1時間が過ぎた。  さっきのメールでは、30分ぐらい遅れるって話だったのに、どうしたんだろ? 遅いなあ。気が変わったのかなあ。どうしよう? 何度もメールで催促するのも気が引けるしなあ……  待ち合わせの相手はかつて学生時代に所属していたバスケット部のマネージャーの美代子だった。  竜太は、とうとう正選手になれずじまいだったが、美代子とは気が合って部活の帰りには、よく一緒にラーメン屋の『来来軒』に立ち寄ったのだ。家が隣り町で自転車通学だったので、部活で遅くなった時などは成長期の若い身体には腹が持たなかったからだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加