立ち尽くす男

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 竜太の携帯が鳴動した。美代子からのメールだった。 《竜ちゃん、どこに居るの?》 《時計台の島模様って言うから、ゼブラゾーンのとこだけど》 《えっ? なにそれ! 境内の縞模様って、太い縄のあるところよ。メールを良く見なさいよ》 『場所は、前に竜ちゃんとけいだいのしまもようのあるところで会ったでしょ? あそこで』  ええっ! 時計台じゃなくて、境内かい!? 《ごめん! 勘違いしたよ。どうしよう?》 《しようがないわね。じゃあ、こうしよ。そこで、ずっと待つのは寒くて大変だから、ラーメン屋の『来来軒』で待ってて。そこから動かないでよ。いいわね。1時間で行くから》  20分後。竜太は泣きそうな顔で携帯を握りしめ、震えていた。  メールを打ちたいのだが、ここから動くなと厳命されたので送信ボタンを押していいものか、迷っているのだ。 《美代ちゃん、待ち合わせの場所を変えてもいいかな? ここは寒いんだよ。『来来軒』は、今日は休みなんだよーっ。新型インフルエンザに罹患の為、当分、休みますって貼り紙がしてあるんだよーっ》  ふ、ふぇーくしょいっ!  無情にも、竜太は寒風の中に立ち尽くすばかりだった。 ―了―
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