終わりと始まりの目覚め

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ある冬の日だった。 妹が風邪をひいたのだ。 貧しく日々の生活で手一杯だった少年の家には、満足なクスリも部屋もベッドもなかった。 どうしようもない中、少年は母や妹には内緒で貯めていたお金を使い、町まで行くことを決意した。 しかし、少年が住んでいた村から町までは20里も離れており、当然のごとく少年の母はそれを許しはしなかった。 ※この場合の一里は500mとする。 大人の脚でも行って帰ってくるので往復で半日は費やすというのに、少年を、ましてはこの吹雪では町に辿り着けるかすら分からないからである。 その母の心配を感じながらも、熱にうなされている妹をただ見つめているしか出来ない自分が悔しく、少年は密かに家を出たのだった。 少年が家を出ると、吹雪は止んでいた。 少年は初めて、神様に感謝の祈りを捧げた。 町までは、運良く村に立ち寄っていた行商人の馬車に乗せてもらい時間を短縮出来た。
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