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陰鬱な雨が降り続き、街では外を出歩く人も少ない。
「チッ!」
都内の一角にあるスタジオで星沢哲也は盛大に舌打ちをした。
その理由はバンドメンバーの一人であり、ボーカルを努める上川由佳が練習に遅刻しているからである。
「何でアイツはこう責任感というものがないんだ」
一人でも欠ければ練習は始められない。誰に言う訳でもなく不機嫌な表情で星沢が愚痴を溢す。
「まあまあ。上川さんにも何か事情があってのことでしょ?」
隣でベースのチューニングをしながら箕田清一が笑いながら言う。
上川からはスタジオに入る前に「少し遅れます」とメールが来た。
しかし、もう練習が始まって40分は経過している。いくら何でも遅すぎる。
「アイツに男でもできたんじゃないか?」
ドラムスティックを回しながら松田大輔が笑った。
「アイツに男ねえ……、そんな男がいたなら趣味を疑うな」
星沢が溜息を吐いて揶揄するように言う。
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