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とその時──
「す、すみません!道端でおばあちゃんが倒れていて……!」
扉を勢いよく開ける音と共に登場したのは上川由佳である。
髪はボサボサで寝癖が付いており、つい先程まで寝ていたことが窺える。
「遅い!!貴様はどうして毎回のように練習に遅刻するんだ!大体、その言い訳は二回目だ!お前は罪の無いお年寄りを何人病院に送るつもりだ!?」
派手に登場した上川を星沢が凄まじい剣幕で怒鳴り付ける。
「あー、しまった!す、すみません!実は寝坊してしまいました!星沢さんにメール打った時はまだ家でしたっ!」
「そんなことはお前の寝癖だらけの酷い頭を見ればすぐに分かるわ!」
「んなっ!か、仮にも女性の容姿に対して酷いはないでしょうよ!せっかく急いで来たのに!」
「それを偉そうに言うな、バカ!急ぐのが当たり前だ!」
「……!」
「……!」
やれやれと溜め息をついて箕田はいつものように仲裁に入る。
「止めなって二人とも!練習始めるよ」
このコントのようなやり取りは、最早このバンドの日常となっている。
松田は面白がって見ているだけなので、この役目は箕田に定着している。
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