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──後一歩だったんだ。
星沢は、あることが切っ掛けでボーカルを辞めた。
星沢は音楽も、つまりギターすら辞めようかとも思ったが、それは思い止まった。
俺から音楽を取ったら何も残らない。
そうしてボーカルのいない状態で数ヵ月が経ち、松田が高校の後輩だという上川由佳を連れてきた。
上川は高校では軽音部のボーカルをやっていたらしく、なるほど技術はまだまだであったがよく通る声でボーカルに適していると思った。
荒削りだが不思議と惹かれるものがある。
当初は明るくて元気な上川の性格がバンドのムードメーカーとして機能しつつあったが、蓋を開けて数ヶ月経ったらあの様だ。
努力はしているようだが殉情で短絡的で馬鹿。思ったことは直ぐに言うし行動に移す。如何せん奔放過ぎだ。
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