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「いつまで不貞腐れている。練習始めるぞ、準備しろ」
星沢に言われて上川は渋りながらアンプを弄り始める。
ちぇっ、不貞腐れさせたのはアンタでしょうが。
上川は腐りながらもマイクをアンプに接続して電源を入れ、イコライザーを調節する。
ここで抜かるとハウリングやノイズが酷くなるのだ。
「星沢さん、準備出来ましたよ」
「よし、じゃあ『明日吹く風』辺りから始めるか」
『明日吹く風』はdaphneの曲の中でも技術的に簡単な曲で、ウォーミングアップとして演奏されることが多い。
アップテンポな曲で上川が好きな曲の一つだ。
星沢の合図に松田がスティックを数回鳴らすと、星沢がギターを弾き始めた。
静かなクリーンのアルペジオ。やがてそこにベースも重なり、ギターとベースの美しいハーモニーを作り出す。
──そして星沢がエフェクターを切り替えると、荒々しいギターのディストーションサウンド、床に響く重低音のベース、力強いドラミングが重なる。
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