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スルリと風のように宏太は圭人の隣を会釈して通った。
「薮君っ!」
少しの思考が停止した後、振り返り、宏太の服をつかんだ。
「薮君っ…薮君」
「…」
宏太は驚いた瞳を圭人に向けて、目をパチパチとさせた。
「…誰だ?君は……」
どくんっ……
「嘘……」
「ごめんね、じゃあね」
宏太は、やんわりと圭人の腕を離すと歩いていく
「…嘘だ、嘘だ、嘘だよね…?」
足元を揺らがせて、その場にうずくまる
「……どうして?」
「運ばれてきた時、彼らは全員、記憶を失っていた」
「!!」
上からの声
医師は歩いていく宏太の背中を見ながら言った
「君だけだ、記憶が残っていたのは」
「…」
「……調べさせてもらったよ、脳を」
「…脳?」
圭人は医師を見上げると、涙が溢れ出しそうなのをぐっと我慢した。
「君が……彼らの記憶を混乱させたんだ」
「……ッ」
それは信じたくない事実
浅はかな考え
チカラを持て余した
神のチカラ
「…ごめん…ごめんなさいっ」
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