藤袴の縁

3/18
前へ
/870ページ
次へ
 幕府十三代将軍・足利義輝が、松永や三好らに殺された時、当時僧だった義輝の弟・義昭にも、魔の手が及びかかった。  義昭は細川藤孝らに守られ、辛くも近江に逃れた。そして、還俗し、上洛して将軍になるべく、各地の大名に檄を飛ばした。しかし、どの大名の反応もいまいちだった。  そこに颯爽と現れたのが、尾張、美濃、伊勢半国を領する信長だった。信長は義昭を迎えると、さっそく上洛戦に備え、近江の浅井氏や六角氏に協力を要請した。  浅井長政は信長の妹・お市の夫で、すぐに協力してくれたが、六角氏はなしのつぶてだった。  六角氏は当初、義昭を匿っていたが、三好らの武力を恐れて見捨て、そのため、義昭は越前まで落ち延びたという経緯もあった。  近江を通らなければ上洛できない。そこで、信長は六角氏を討つことにした。  出陣した信長は、あっという間に蹴散らしてしまった。六角氏は闇夜に逃亡。残された家臣達は信長に降伏。あっけないものだった。  降伏した六角家の重臣の中に、蒲生賢秀がいる。賢秀は近江国日野五万五千石の領主で、北伊勢にも勢力があり、城下は賑わってなかなか裕福だった。
/870ページ

最初のコメントを投稿しよう!

530人が本棚に入れています
本棚に追加