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「いや誠に驚いた!」
織田信長は甲高い声で笑った。
永禄十一年(1568)秋。京。
流浪の足利義昭を奉じて、見事上洛を果たした信長は、義昭を将軍職に就け、忙しい日々を過ごしていた。
それでも一息つく時間を見つけ、笑い話に興じていたのである。話し相手になっているのは藤吉郎。呼び出され、今後の指示を受けたが、そのままとどめおかれて話し相手をさせられている。
それにもう一人。こちらは客人だ。紹巴という当代一流の連歌師である。楽しく話している間に、この客人がふと、
「そういえば、蒲生の若君はどうしておられましょうか?」
と、訊いてきた。
紹巴は去年、近江の蒲生家に滞在したことがあり、そこの鶴千代という若君と知り合いだというのだ。そして、かなりの秀才だという。
信長もその鶴千代とは面識がある。初めて会ったのは最近だが、信長はそれはそれは驚いたと、その初対面の席上での出来事を笑ったのだった。
信長と鶴千代との対面。それにはちょっとした経緯がある。
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