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【1】
『……ニュースをお知らせします。先月31日、連続殺人犯として指名手配されている神宮司 弾容疑者が―港で発見されました。警視庁の捜査員らが現場で神宮司容疑者を確保するために動いた模様ですが、神宮司容疑者は現場から逃亡。現在も行方を眩ましております』
警視庁のロビーにある巨大な液晶モニターに、ニュースを告げる女性アナウンサーが淡々と言葉を述べる。
『なお、この際、警視庁の女性捜査員一名が負傷し、男性捜査員が一名が死亡した模様です。捜査員の名前は現在控えられていますが、関係者の話によると死亡した男性捜査員は突如 頭部から発火し、それが原因で亡くなられた模様です。火の気のない港で、この不審な発火は何なのか、警視庁には情報の公開を求められています』
真山純平は朝食のサンドイッチを口に放りこんだ。
探偵会での研修を経て、配属された警視庁捜査一課刑事係。
自分がその一員と考えるだけでまだ胸が熱くなる。
しかしいつまでもうかうかしていられない。
警視庁に入庁したということはそれだけ多忙になり、責任も重大になるからだ。
『――果たしてこの発火は神宮司容疑者に関係するのか。専門家は『ありえない』と断言しております。警視庁は逃亡した神宮司容疑者の行方を追うと同時に、この不審火についても調べを進めています』
真山はサンドイッチをごくりと飲み込んだ。
さて。
神宮司 弾、か。
真山がその名前を知ったのは数ヵ月前。
年明け前の9月だった。
探偵会の研修期間が終わる直前――実質、探偵会で携わった最期の事件だった。
突如として姿を表した神宮司。
真山はその男についてまったく知らなかった。
だが一目 見たときに、強烈な狂気を感じた。
ただ、そこに立っているだけで空間を支配してしまうほどの雰囲気を醸し出す男。
それが真山が初めて神宮司を見たときの第一印象だった。
「よしっ!」
真山は頬を叩いて気持ちを切り替えた。
神宮司について知りたいこともたくさんある。
だがそれ以上に。
真山には追い求めるものがあった。
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