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立ち上がりの良い、ドラム。地盤を支えるかのようなベース。高速で奏でられながらも互いに絡み付く2つのギター。
そして何よりも感情を剥き出しにしたヴォーカルの絶叫。
……やっぱ、「Silver Bullet」は最高だね。
赤城はソファに寝転がりながらタバコを口で弄びつつ、イヤホンから流れてくる音楽に心を癒されていた。
トレンドに流されることなく、ファンに媚びることもなく常に自分たちの音楽を追求するバンド「Silver Bullet」。
彼らが奏でる音楽ももちろんだが、その真っ直ぐな姿勢が赤城は好きだった。
新作アルバムの2曲目、「ヴィクティム」。
オープニングのSEが静かにフェードアウトしてゆき、パッと視界が拓けたようにドラムから始まり、ベース、ギター、ヴォーカルがひとつずつ絡んでゆく長尺の曲だ。
たしかメジャーデビューからまだ5年くらいだったか。
しかし「Silver Bullet」は作品を追うごとに常に変化、否 進化を遂げ、今では海外での人気も確かなものになりつつある。
それでも傲ることなく、「売れ線よりも自分たちの音楽の追求」を続ける彼らはアンダーグラウンドな存在として生きている。
だがそれこそが彼らが彼らでいられる理由なのだろう。
ふと肩を掴まれ、体を揺すられた。
なんだよせっかく名曲に浸ってるのに。
赤城は寝転がるソファの上で身体を回し、その手から逃れた。
だがその手は諦めることなく……。
「いででででっ!!」
肩を物凄い力でつねられ、赤城は思わず飛び起きた。
イヤホンを耳から外し、つねった犯人を「勘弁してくれよ」と言いたげな目で見つめた。
「朝霧さん……何すんですか」
赤城の肩をつねった犯人――朝霧剣斗は子どものように笑った。
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