前哨戦~人類絶滅の開幕

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「ひぃ……ふぅ……みぃ……ざっと10人か。俺も嘗められたもんだな」  神宮司は辺りを囲む刑事らに怯む様子もなく口を開く。  彗鶴の背中に悪寒が走った。神宮司は自分に背中を向けている。神宮司は特に顔を動かすでもなく、自分を取り囲んでいる捜査員の人数を当てた。視覚的に神宮司から彗鶴は見えないはずだ。  ……どうやって? 「おい、俺を撃たねぇのかよ?」  さらに神宮司は挑発する。その姿に普通なら追い込まれた筈の人間が見せるはずの諦め、怯えといった負の感情は見えない。 「大人しくしろ、神宮司!」  刑事は拡声器で呼び掛けを続ける。  だが神宮司は笑ってため息をついた。 「それが日本警察の悪い癖だな。追い詰めた犯人に対して恐怖を提示しない。せいぜい拡声器で呼び掛けるか、空中に向かって威嚇射撃をするくらいだ。本当に犯人を捕まえたいなら拘束弾でも撃てばいい」 「黙れ神宮司!」  呼び掛ける刑事の声が次第に荒くなる。  まずい……。  直感的に彗鶴はそれを悟った。無防備な神宮司に対してこちらは準備万端で神宮司を待ち構えていた。  その警察の余裕を神宮司は衝いてきた。 「おい。この中に生身の人間を撃った奴は何人いる? もしかして1人もいない、ってオチは無ぇだろうな?」  それを聞いた捜査員らが銃を構えなおす。  それを見た神宮司は深くため息をついた。 「……まじかよ。そんなんで犯人に銃向けて、いざって時に引き金を引けると思ってんのか?」  神宮司は向かって右にいる女性捜査員を見た。彼女は一瞬怯えたような表情を見せたが、すぐに拳銃の標準を神宮司に合わせる。 「お嬢さんさぁ、よくないよ。あんたの筋肉じゃニューナンブの反動に負ける。それに射撃訓練と違って俺は人間だぜ? あんたに生身の人間を撃つ覚悟はあるのか?」
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