前哨戦~人類絶滅の開幕

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「静かにしろ!」  神宮司から声を掛けられた女性の反対側で神宮司に銃を向ける男性捜査員が言った。  まだ若手の刑事だ。彗鶴と同期で、ここに来る前に彼と「事件が終わったら飲みに行こう」と約束したばかりだった。  神宮司は彼を睨んだ。頭から爪先まで値踏みするように見ると苦笑した。 「くくっ……あんたもか」 「それ以上口を開くな! 次は発砲する!!」  男性捜査員は額に汗を浮かべながらも必死に神宮司に銃を向ける。  だがその様子を見ると神宮司は不敵に笑うのだった。 「撃つのか? 構わねぇぜ。けどあんたが外したら向かい側にいるこのお嬢さんに当たることになるぜ?」  彗鶴は視線を走らせた。確かに男性捜査員の対角線上に先ほどの女性捜査員が銃を構えている。  神宮司に対して約3m。ほとんど外すとは思えない距離だが万が一、外してしまえばその先にいる女性捜査員に着弾することになる。 「犯人を囲む際の位置取りもできてない。こんなんで俺を捕まえようなんて滑稽すぎるぜ」 「くっ……」  男性捜査員は眉間に皺を寄せた。  神宮司は丸腰だ。状況的にはこちらが圧倒的に有利。  だが神宮司は怯む様子もなく、言葉という口撃で捜査員を迷わせている。  再び神宮司は男性捜査員を睨んだ。 「俺……あんたみたいな人、嫌いなんだよね。勝ち目の無いくせに向かってくる熱血野郎が。目障りなんだよ。……殺したくなっちまうぜ」  神宮司の目に狂気が宿った。  男性捜査員は銃をしっかりと両手で構え、神宮司を狙い、発砲した。  だが彗鶴はそれと同時に神宮司が上げていた左手を彼に向けたのが見えた。
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