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「恵はどうしてここにいるんだい?」
「それは……音楽の勉強をするためだし、家族が居るから」
「恵は、音楽の勉強を続けていってどうするんだい?いや、どうなりたいんだい?」
「…………」
私はその質問に答えることが出来なかった。フランスに来たのも音楽を頑張っていこうって思ってたからじゃない。家族がいるから、それだけだった。
そう、私はあの時、誠二くんより家族を選んだんだ。
「ここには音楽家になりたいと思ってる人がたくさんいる。その中で恵は三位になったんだ、すごい事じゃないか。続けていけばきっとご両親のように活躍出来るだろう」
「でも、私は……」
私はそこで言葉をつまらせた。失礼だと思ったから。
先のコンクールでも私より一生懸命頑張って来た人なんてたくさんいたはずだから。
「そうなりたいとは思わない……かい?」
ジャンのその言葉に少しだけ驚いた。私はジャンが私が立派に成長する事を望んでいると思っていたから。
コクリ……。
私は頷きだけで返事をした。その後のジャンの反応が少し怖かったから。
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