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「恵……」
少し間が空いてジャンが静かに話し出す。
「僕は本人が望まないのにやれという強要はしない。恵がここで音楽を続けていこうという気があるのなら全力でサポートするけどね」
「音楽は……好き」
「…うん」
「だけど、今はそれ以上に誠二くんのそばに居たい。誠二くんは私の全てだから。誠二くんがそばに居れば何でも頑張れると思う」
「………なるほど、わかったよ」
スッ…。
「ジャン?」
ジャンは立ち上がり着て来ていたコートをはおった。
「実は恵のレッスンは一年契約でしているんだ。僕はそこまでにしようと思うよ。だから、3月までだね。それまでは僕が持っていることを全て教えよう。少し用事を思い出したから今日は失礼するよ」
「あっ……ジャン……」
「あとは恵、キミ自身が出来ることをやるんだ」
「私が……」
「普通に見れば恵は恵まれた環境にいる。だけど、僕は恵の気持ちを否定したりはしないよ。きっと僕は音楽家の先生としては失格なんだろうね」
「そんな…!」
「おっと、ここまでだ。また明日に」
そう断ち切ってジャンは部屋を出て行った。
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