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始めと終わりで曲調が全然違う曲。
タイトルを……つけろと言われていたんだっけ。
その事を考えながら演奏していたんだ。
その時、部屋のドアが開いた。
「めぐちゃん、お隣さんからお菓子ですって」
「あっ、お母さん。うわぁ、マドレーヌか。おいしそう」
「今の曲……」
「ああ、今の?ジャンから楽譜もらったんだよ。いい曲なんだけどタイトルがついてないんだって。私につけろって」
「その曲のタイトルは『転生』…よ」
「え?お母さん知ってるの?発表されてないって言ってたけど…」
お母さんは微笑んで答えた。でもその微笑みは少し寂しそうだった。
「その曲を作った人はね、昔、愛し合ってる人がいて、ある事情で離れなくちゃならなくなったの」
お母さんは懐かしむように話していく。
「国を離れて、遠い所からお互いを想っていたわ。でも長い時間が経つ内に連絡も取れなくなってしまったの」
「……寂しいね」
「そうね。でもその後、その国で出会った同じ故郷の人と結ばれて幸せになったのよ。その時の心情を書いた曲よ」
「だから、『転生』…」
「気持ちの生まれ変わりね」
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