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「このために残していたわけじゃないからな」と、恥ずかしそうに言ったお父さんが少しかわいかった。
日本には何も残さないと聞いていたから驚いたけれど。
お母さんを見ると、ウインクでガッツポーズだ。今までの緊張感が幻のように消えちゃった。
ジャンはただ誠二くんのそばに居れるように紹介状を書いてくれたわけではなく、私の音楽活動のためにも精神的にそちらの方がいいと判断したからのようだ。
私のさらなる飛躍のためにも。
ジャンには感謝の気持ちでいっぱいだった。
世の中には素敵な出会いがたくさんあるっていう事を身に染みて感じてた。
レッスンは予定通り3月までやるという事だったんだけど、私のわがままで卒業式までには帰りたいと話した。
ジャンは笑ってその申し出を受け入れてくれた。
フランスを経つ数日前に誠二くんからの手紙が届いた。
就職が決まったと報告の手紙だったんだ。
私の街と反対側の街、黒岩町にある楽器店のスタッフらしい。
一応音楽関係の仕事だった。私の事を考えて……と、淡い期待をしていた。
あとで聞くと、その通りだったことが誠二くんらしい。
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