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そして今。
一年前まで何度か通ったことのある道を歩いている。
誠二くんの通学路だ。
何も連絡はしていなかった。驚かしてあげようと思っていたから。
きっと、びっくりするんだろうな。
誠二くんが一人で帰って来るかわからない。卒業式だもん、寄り道だってしてくるかもしれない。
でもなんとなくだけど、誠二くんはこの道を一人で真っ直ぐ帰ってくる。
そんな気がしていた。
その時間に合わせて、まずは誠二くんの家に向かった。一歩一歩を懐かしく思って、日本の地を歩いていることを実感しながら。
軒並み並ぶ瓦の屋根が日本を思わせる。
そして誠二くんの家を一目見て、そこから柳ヶ浦高校への道を歩き出した。
その間にも、この道で話したことなんかが頭の中に蘇ってくる。
少しずつ、制服を着て二人で並んで歩いていた頃の私に戻ってきていた。
そのまま少し歩いて、公園が目にとまった。
何度か誠二くんと寄り道したことがある公園。
何かに引き寄せられるように、自然に私の足はそこに向かって歩き出していた。
私たちはやっぱり繋がっているんだ。
そう自惚れてしまいそうだったな。
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