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私はついにたどり着いた。
愛する人の元に。
時間を考えれば唯一の寄り道だったんだろう。
卒業証書が入った筒を傍らに抱え、公園で青く澄んだ空を見上げる誠二くんがいた。
一瞬、頭の中が真っ白になってその場にぼーっと立ち尽くしていたんだ。
ずっと会いたかった。
そう思ったことはもう数えきれない程。
私は笑っていた。
多分、笑っていたんだ。
「んーーーーーーっ!!やるぞーーーーっ!!」
両手を大きく広げ、大空に向かって誠二くんが叫んだ。
それをどんな意味でやったのかは考えなくてもわかったんだ。
あのビデオレターを見れば、誠二くんの気持ちはわかるから。
「ふふふ……人が見てたらどうするの?」
自然に話すように言葉が出ていた。昔に戻ったように、自然に話していた。
誠二くんは不意にかかった声に驚いてこちらを見た。
そして、一年ぶりに二人の目が合ったんだ。
「あっ………」
「卒業、おめでとう。誠二くん」
…長かった。
「少し、痩せたんじゃない?」
やっと話せた。
「……会いたかったよ」
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