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それはまさに『寝耳に水』だった。
「はい?今なんて言いました?」
「だから、シェンバロ王国の第一王子と結婚せよ、と」
「な、なんでそんなに突然なんですか?お父様」
「あちら側の都合だ。こっちには何の連絡もなく、勝手に婚姻の準備を進めておったらしい。確かに、断れない立場なのだが……」
この国の第一王女・ラティアはあまりに突然のことにめまいを覚える。
これはいわゆる、政略結婚だ。
いつかはしなければいけないと思っていたが、こんなに突然だとは。
シェンバロ王国はこの辺りでは一番武力を持っている大国だ。故に、逆らうことは許されない。
もしそのようなことをすれば、その国がたどる道はただひとつ。
滅亡だけ。
だから、武力などほとんどない、平和すぎるこの国が逆らえるはずもないのだ。
この国の国王であるラティアの父は、苦々しい表情をしている。
父なりにラティアの心配をしてくれているのだろうが、こればかりは父にもどうにも出来ないのだということが、その表情からうかがえた。
ラティアは父が好きだ。
だから、困らせたくはない。
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