己の価値

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何も無い状態で生まれ、成長するごとに悪魔の能力が開花していく、そんな人種であった。 この世界に蔓延するのは新悪魔であり、オリジナルはごく少数であった。人間が混血になるために必要な血はそのごく少数であるオリジナルの血を啜るということなのだった。 だから、ケルトが混血になれたのはひとえに運がいいということだったのだ。彼は現在混血としてこの世界で生活している。だが、一人ではない。同居人として悪魔と2人で暮らしている。外界を拒絶しているといったケルトが何故。そんな疑問を抱くはずだろう。 彼は悪魔に拾われた、いや、救われたという方が正しいか。瀕死の状態で森の中に倒れていたケルトを同居人の悪魔が拾い、介抱したのだった。だからこそ、ケルトは今、生きているのである。 「おい、爺さん。もう体は大丈夫なのか?」 ケルトは今、山の中の自宅にいる。そして、とある一室の入口から、もう一人の同居人に話しかけているのであった。 「おお。じゃから、こうして畑仕事に行く準備をしておるじゃろうが」 同居人とはお爺さんだった。ケルトは青年。歳をいえば20歳そこそこ。 「じゃからって・・・。まだ風邪治ったばっかだろうが。せめて今日までは安静にしろや」 だが、ケルトの忠告も虚しく、爺さんは聞く耳を持たない。せかせかと準備をし、動きを止めようとはしない。 「よう言うわい。まだまだ若い者には負けんぞい」 爺さんは身支度を終え、勢いよく立ち上がると、ケルトに向かって歩み寄る。というよりは、ケルトが部屋の入口に立っているだけであり、爺さん自体は部屋から出ようとしているだけであった。
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