己の価値

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(あっ、ラクトス・・・。) 意識を手放すという類似する行動により昨晩のラクトスとの話を思い出したのだった。そう、ラクトスとは獣王の杖の話のことだ。何でも願いの叶う杖。それしかないと確信したケルトは、明日より行動を開始することを前提とし、今日は英気を養うためにしっかりと寝ることにする。 そして、夜が明ける。目覚めたケルトは体を起こす。すると、横にはすでに起きているミリがじっとこちらを見ていた。 (おい、今日はつねらんのかい。) だが、それはないよな、と、冷静さを取り戻すケルトであった。昨日あんなことがあって、今日はもう吹っ切れましたなんていうデンパちゃんでなかったことにケルトは少しの安堵を覚えた。 ミリにこのランプでの武闘大会の話を聞いてみた。すると、結構有名らしく、前にミリも母と見に行ったことがあるとのことだった。大会は毎年あるらしく、獣王の杖を狙って毎年出場している者もいるのだとか。 「ケルト・・・」 不意にミリは呟いた。 「なんだ?」 「私も出る」 ミリの発言にケルトは目玉が飛び出すかと思った。 (えっ・・・!?バカですか。遊びに行くのとは違うんですが。) 「お前は家で大人しく待ってろ。大会は危ないんだからな」 「そんなことは知ってる」 「なら、我儘言うんじゃない」 「我儘じゃないもん。昨日、ケルトが寝言で『サリファ・・・』って呼びながらうなされてたから」 「なに!?」 ケルトは急に顔が真っ赤になる。
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