*それはひどく突然で。

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  誰もが振り返るくらい、その男子高生は目立っていた。 透き通るような雪白の肌。 ぱっちりとした二重の目。 まばたきをする度、ばさばさと音をたてるのではないかと思うほど長く瞳を縁取る睫毛。 ぽってりと赤く熟れたような唇。 栗毛色の、さらさらと風に揺れるストレートの髪。 身長は170ほどで、線は細いが、手足が長くバランスが良い。 そんな美術品のような容姿をもつ麻央は、私立紫堂学園(しどうがくえん)に通う高校3年生である。 いまは午後18時。生徒会の仕事を終えて学校から家に帰っている途中だ。 学校から家までは徒歩8分、電車15分。帰宅ラッシュなためか、この時間帯は電車がひっきりなしにくる。 だが、電車を待ち始めてから20分弱、目の前を通り過ぎたのは4台目だった。 (どうしたらいいんだ…) いつまで経っても乗車できない、どうすれば解放されるのか。 麻央は、駅のホームで自分と同じ制服を着た長身の男とにらめっこをしていた。 なんだか視線を感じるような、そう思ってその方向を向くと、この男と目が合った。 気まずいながらも、時間が経つうちに、そらせない状況になってしまったのだ。 男の身長は、麻央より10センチ程高いせいか、結構な至近距離なので、見上げる形になってしまう。 (うちの学校のやつ、だよな…でかい…)  
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