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「なっ…」
抵抗も虚しく彼の中にすっぽり埋まってしまった。
「ほら、俺らサイズぴったりじゃん。」
本来なら暴れてでも抜け出すところだけど、涙を隠してくれるような包み方をされて、反発するより素直に従おうかと思った。
「…少しだけそうしていてもらってもいいですか…?」
「…やけに大人しいな。わかった。好きなだけ泣けよ。」
「…うっ…。ひっく…。ひっく…」
彼の手が私の頭を撫でる。
溢れ出る涙と供に悲しい思い出も消えてしまえばいいのに。
逆に今の私は、涙を海水に例えると海水が蒸発して、塩分だけ残していくように悲しい思い出が塩となって私の中でこびりついて、残っていく。
思い出だけが悲しくも浮かび上がる。
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