悪夢

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「俺、気に入っちゃった。リンちゃんのこと。」 「…何でですか」 「不毛な恋をしてるあたりが。」 私は酔っ払ってこの人に話してしまったのだろうか。 全く記憶がないけれどその辺の事情をしっているならば話が早い。 「しばらく独りでいたいんです。独りにしてもらえないですか。」 「失恋には新たな恋が効くっていうじゃないか。」 なんだか予想以上にめんどくさそうな人だ。 「…私帰りたいんですけど。」 「じゃあ、送ってくから」 男は、にこっと笑う 顔だけ見たら…顔だけなら確かにかっこいい。端正な顔立ち。 「…あなた、やまとさんでしたっけ?」 「あ、名前覚えてた?」 「さっきマリが…私は帰るだけなんでホント構わないでください」 「いや、ついてくのは俺の自由っしょ」 「えっ…」 次の瞬間、向かいの道路にいたスーツの男性が目に入った。 女性と腕を組んで歩いてる。 息をのんだ。 言葉が出ない。 体が固まる。 すると突然やまとが「行くぞ」と行って私の腕を引く。 「えっあっ…」 やまとと、しばらく手をつなぎながら歩き続けた。 数分経ち、会社から離れた所で立ち止まった。 「どうして…」 どうしてわかったの?さっき向かいの道路を歩いていた男性が、私を捨てた上司だと。 私の全てだった男だと。 「リンちゃんが動揺しすぎなんだよ。そんなんだったら会社のみんなにばれるぞ。」 そう言われて涙が溢れてきた。
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