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エレベーターの稼動音しかしない室内。メイちゃんはメイちゃんで俯き黙ってるし、僕は僕で状況整理に忙しいため、必然会話は生まれなかった。
ていうか、総督って何? 社長の別称?
報道室って何? 社内アナウンス的な?
もしやメイちゃん、僕を詐欺る気? 利益なんて見込めないのに。
高校時代以来4年振りの再会なんだけど、まさかメイちゃん頭おかしくなった訳じゃ……
「……なあ平明」
「はひ!?」
やば……。考え事+油断で声上擦っちゃった。
でもメイちゃんは特に気にする様子も無く、顎に手を当てる様は真剣そのものだった。
「覚えているか? あれは中学2年の夏だった。一緒にプールに行った帰り、私の家の前で平明に『付き合ってくれ』と告白されたな。あの時私は『考えさせて……』と、頬を赤らめ乙女トーンで答えた。それなのに……」
表情はそのまま、顎に当てている手が小刻みに震えてる。
おかしいな。あの後一向に返事が無かったから、てっきり断られたのかと思ったんだけど……。何でこのタイミングで?
「それなのにお前は……お前は! 中3で亜実と、高校生の時は史華と、大学の時は知らんがどうせはべらかせていたんだろう。私は返事をしていないというのに!」
……え? 何この展開。
「しかし返事を遅らせた私も悪い。だから今度は逆転立場だ。平明」
「はい?」
メイちゃんは突然僕に歩み寄り、そして……
-チュ-
…………え?
「よ、喜べ、ファーストキッスだ。平明、私の伴侶となってくれ」
「……」
まだ状況が……
「返事はこの先の真実を見てからで良い。さあ、行こう」
恐らくエレベーターは結構前に止まっていたんだと思う。
メイちゃんが掃除用具入れの扉を開くと、そこはまさに……
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