うたいびと

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もう3月も後半だっていうのに、まだまだ夜は寒い。 上着の前を閉め、ポケットに手を入れて、私は駅近くのざわざわした街中を歩いてた。 ふと気がつくと、どこからか聞こえてくる音。 『あ、もしかして?』 そう思って音の聞こえてくる方向へ足をすすめた。 歩いていくと、道に座ってギターを弾く彼がいた。 なんとなく彼の前に立って、歌を聴く。 歌が終わったから、一応拍手とかしてみる。 私の拍手に気付いて、彼は笑った。 「ありがとうございます!」 人懐っこい笑顔に、普段は人見知りする私も緊張せず笑顔を返す。 『曲、全部自分で書いてるんですか?』 私の質問に彼はまた笑顔で答える。 「そうですよ。」 へぇ…そう思ってたら、 「まだ時間あれば、もう一曲聴いてってくださいね。」 て笑って、また彼がギターを弾き始めた。
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