44人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…旦那…?」
「なんですか?」
どうしてこんな状況になったのかいまいち理解が出来ないオレ。
今日はオレが料理当番だったから、皆が休んでるうちから下準備を始めていたら案の定(?)これ。ジェイドに後ろからがっちり捕まえられ身動きがとれない事態になっていた。
「あの、旦那。邪魔…ι」
はっきりと言ってやるがそれは勿論無意味。『別にいいじゃないですか』と言って肩に顔を埋めてくる相手にもはやため息をつくしかない。
っていうか誰かに見られたらどーすんだ…
「最近戦闘ばかりが続いて、もうガイ切れですよ」
「オレは充電器ですかい」
笑って言葉を返すなり、オレはそっと瞼を閉じた。
背中から感じる暖かな温もり。こんな時だけ、オレはすべてを忘れられるんだ。『憎しみ』や『悲しみ』すべて、あんたが溶かしてくれる…全部。
そんなことを考えているとそっと自分からジェイドの温もりが離れた。少し残念に思うが、絶対口にはしない。それに、口にしなくたってどうせあんたにはお見通しなんだろ。
「どうしたんですか?邪魔だったんじゃないんですか?」
「…っ」
からかうように笑いながら頬をつつくジェイド。
本当にこの人には色んな意味で勝てない。いつだって余裕な笑みを浮かべて、時に見せる表情などに時折思い知らされる。
この人は
『大人』なんだと。
まさかこの歳になって、大人になりたいなんて思ったのは驚きだ。
「ガイ、どうかしましたか?」
口は悪いくせにこうやってすぐオレを気遣う。すぐに気付く。
そっと髪に触れて目を覗き込んで
オレはもうそれだけで心臓が弾けてしまいそうなのに…
「旦那、やっぱりあんたはずるいよ…」
「また人聞きの悪い。私は貴方が好きなだけですよ」
そっと優しく口唇が触れて、料理中だってのに馬鹿みたいに甘いキスをした。
END
最初のコメントを投稿しよう!