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些細な幸せ
「ガーイ♪」
「ぅおあ…!?ι」
ようやく長い野宿生活も終わりを告げ、宿で一息ついていた所で急に背後から聞き慣れた声がしたかと思ったら大きな手にぎゅぅっと身体を抱き込まれていて、オレは驚いたような声を上げた。勿論それが誰かなんてわからない訳がない。
「だ、旦那!急に何するんだよッ//」
「いやですねぇ、ただのスキンシップじゃないですかー?」
そういいながらオレの腰やら尻やらを撫でる辺りもはや『スキンシップ』の領域を越えていることに気付いて欲しいものだ…
まぁ、別に今さらな気もしないでもないけれどな。
「どうしましたか?」
にこやかに優しく問い掛けられればオレはもう返す言葉もない。わかっててやってるのか、よくはわからないけど…
「んで?旦那は何がしたいだよ…」
呆れた顔をしながら前髪を掻きあげ問い掛ければ、相手はきょとんとした顔をした。かと思えばまた、やんわりと微笑んだ。
「ただガイとイチャイチャしたいだけですよー♪」
「何それ…ι」
「愛情確認みたいなものですよ、ね?」
そういって少し大きな手がオレの頬を撫でた。オレは少し恥ずかしく感じながらも小さく笑みを浮かべてその手を握り返す。お互いの体温が重なって、心地よい気分になるのは何故かわからないけどあったかくて、こんな些細なことを幸せだと感じる。
「ガイ…?」
黙り込んでしまったオレを心配するように相手は顔を覗き込んできた。
「なんでもないよ。ただ、嬉しくて幸せだなって思っただけさ…」
「…そうですか。よかったです。同じ気持ちで……」
ただ触れ合うことが出来て幸せ。傍にいられることが幸せ。これから先も、ずっとずっと…
「旦那、キスしようか?」
「おや、珍しい。今日は甘えたさんですか?」
「うるさいな…たまにはいーだろ//」
「そうですね…」
相手の首に腕を絡めて、そっと口唇を重ねれば…
幸福になるんだ。
『愛してる』
それだけで
オレは救われる…
END
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