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「あの……変な事聞いていいですか?」
「いいよ、僕に答えられる事なら何でも聞いて」
「豊田先輩の事、もう好きじゃないんですか?」
その問いが意外だったのか、廉は一瞬驚いた顔をしたがそれはすぐに笑顔に変わった。
「好きだよ、すごく」
「――じゃあ何でっ」
「奪わないんだって?」
「…………」
今まで真人は欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れてきた。
例えそれが卑怯で卑劣な手段だったとしても構わない。欲しいものを我慢するという選択肢は真人にはなかった。
今ではそれは間違いだったと分かってはいるが、やはり欲しいものは欲しいと思うのが人間の心理ではないかと真人は思うのだ。
だから、まだ好きな癖に何故廉が笑えるのかが真人には分からなかった。
「簡単な事だよ」
「…………簡単?」
「無理やり悠也を奪っても悠也は幸せにはなれないからね」
「でも……三上先輩は幸せになれるんじゃないの?」
「それは違うなあ」
……違う?
無理やり奪ったのだとしても好きな相手を手に入れる事が出来たなら、少なくとも自分は幸せになれるんじゃないのか?
そう思っていた真人の考えを廉は一言で粉々に打ち砕いた。
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