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「だって悠也が幸せじゃないと僕は幸せにはなれないから」
それが強がりじゃない事くらい廉を見れば容易に分かる。
綺麗事なんかじゃなく、廉は本気でそう思っている。
凛とした横顔からは邪な考えなど微塵も感じられなくて、心のどこかがズキンと酷く痛んだ。
何もかも違いすぎる。
純粋で、それでいて芯は強く、相手を思いやる心を廉は持っている。
廉の周りにはいつも優しい風が流れ、皆自然とそこに引き寄せられ彼の人間性に惚れる。
だから廉の周りにはいつも笑い声が絶えないのだ。
それに比べ自分はどうだ?
本気で頑張る事もせず、いつも自分の不幸を嘆き、何もかも人のせいにして生きてきた。
利用出来る者しか寄せ付けず、上辺だけの付き合いしかせずに、利用価値が無くなれば平気な顔をして棄ててきた。
こんな人間誰が好きになる?
「嫌だなあ、完敗じゃないか」
物凄い敗北感に襲われたのに不思議と心は静かだった。
今の自分ではどう足掻いたって廉にはかなわない。
きっとどれだけ口汚く罵ろうとも、廉の笑顔を奪う事は真人には不可能だろう。
「もう一つ聞いてもいいですか?」
「ん、どうぞ」
何となく答えは想像出来るのだけど、それでも真人は聞きたかった。
それを聞いたら幸せになれる気がするから。
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