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「三上先輩は僕の事嫌いじゃないんですか?」
「大好きって訳じゃないけど、嫌いじゃないよ」
やはり廉の答えは真人の想像通りだった。
だけどまだ、信じきる事が出来ない。
「でも僕、豊田先輩に酷い事しました。それでも嫌いじゃないんですか?」
「確かに佐々木君がした事は決して許される事じゃない。だけど気持ちは分かるから。僕だって追い詰められたら同じ事したかもしれないしね」
「三上先輩はしないと思いますけど……」
俯き呟く真人の頭を廉はそっと撫でた。
何度も、何度も。
ああ、この人はどこまでも穏やかで強い人なんだ、と真人は思った。
この人の言葉なら信じる事が出来る……
「分からないよ、僕だって完璧な人間じゃないし僕の中にもどす黒い感情はあるしね!」
「そんな事……」
「それにね、佐々木君反省してるでしょ?だから毎朝あそこで悠を待ってるんでしょ?」
「……何でそれを?」
「僕の部屋から見えるんだ。本当言うと最初は不安だった。また悠を傷付けるつもりなのかな~って。だけど佐々木君の真剣な表情で気付いたんだ、謝りたいのかなってさ。疑ってごめんね」
優しく冷たい手の平が、何度も、何度も、真人を撫でる。
大丈夫だよ、分かってるよって言って貰っているようで真人は顔を上げる事が出来なかった。真っ直ぐに向けられた嘘偽りない言葉がこんなにも胸に響くものだなんて知らなくて……
コンクリートにポタリポタリと雫が落ちた。
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