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チャイムの音が屋上に鳴り響く。
「授業終わっちゃったね」
「……すみません」
「謝らなくていいよ。もう大丈夫?」
「はい、ありがとうございました。おかげで何だかすっきりしました」
嘘ではなく、計算でもない心からの微笑み。
真人がこんな風に笑うのは何年ぶりだろうか?
「いいね」
「…………?」
「佐々木君笑った方がいいよ!すごく可愛い!」
そんな事をサラッと笑顔で言える廉の方がよっぽど可愛いのになあ、と真人は笑った。
「三上先輩、最後に一つ聞いてもいいですか?」
「ん―……何?」
「三上先輩の事好きになっていいですか?」
「は?え?ちょ……それは」
途端に言葉を濁し真っ赤になる廉を見て、真人はクスッと笑う。
本当に、こんなに楽しい時間を過ごすのは久しぶりだった。
「冗談です」
「何それっ、酷い!大人をからかうもんじゃないよ!」
「だって僕、あんな怖い人がライバルなんて嫌ですし」
「へ?怖い人って誰?ねえ、あっ、佐々木君待って……怖い人って誰なの――?」
あんなにあからさまな態度なのに廉はちっとも気付いていない。
きっとこの先相当苦労するんじゃないだろうか、と吉野の苦労を思う真人。
頬をぷくっと膨らませ、とても可愛らしい顔で追い掛けてくる廉に「内緒です」と叫びながら真人は屋上を飛び出した。
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