変わりゆく想い 〈真人〉

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     麗らかな朝。 広大な佐々木家の庭園に広がるのは美しく儚げな音色。 色とりどりの花が咲き乱れる庭の片隅で、真人はヴァイオリンを奏でていた。  麗らかな……朝の一時。 だけどこれは仮初めの一時。 「坊ちゃん、そろそろお時間ですのでご準備を」  執事の田崎がそう告げると、真人は小さく頷きながら空を仰いだ。 「田崎、お祖父様は?」 「もう会社へ向かわれましたが何か?」 「……ならいい」  今日もまた、一人黙々と朝食をとるのかと思うと自然と溜め息が漏れる。 木田への想いを断ち切る決意をしたあの日から、真人は真人なりに再び幸せを手に入れようと努力していた。 だが、祖父は仕事第一主義の為滅多に家に居なかったから、幼き頃の幸せな家庭像を再現しようと努力してみても中々上手くはいかなかった。 「難しいなあ……」  木田を失い、木田を中心に回っていた真人の世界は180度変わってしまった。 心にぽっかりと開いた穴を埋めるのは中々骨が折れる。 ふう、と息を吐き真人は踵を返した。    
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