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……吉野先輩が居るって事は……
「――痛っ」
「何喧嘩売ってんの!駄目じゃん。おはよう佐々木君」
……やっぱり
吉野の頬をつねりながらひょこっと顔を出した廉。
真人が吉野以上に苦手な相手とは廉の事だ。
校内では気が弱い事で有名な廉だったが、それは違うと真人は思っていた。
だって、自分の好きな人に酷い事をした相手に笑顔を向ける事の出来る人なんかそうは居ない筈。
作り笑いなんかじゃなく、穏やかな笑顔。
多分この人は本当に純粋で、人を憎む事をしないとても強い人なんだろうな……
何もかもが自分と真逆の廉を見ると、とても惨めな気分になる。
廉の笑顔は真人には眩しすぎるのだ。
「おはようございます、三上先輩」
「佐々木君、一人?」
「……二人に見えるのか?」
「もうっ、宗ちゃんは黙ってて!待ち合わせとかじゃないなら一緒に行こうよ!」
「いや、僕は遠慮しま……」
「遠慮なんかしなくていいからっ、行こっ!」
強引に手を引かれ戸惑う真人にふわりと笑んで廉は歩き出した。
大きくて、冷たい、大人の男の手の平。
たった一歳しか違わないのに、この差は何なのだろう?
豊田先輩にしろ、三上先輩にしろ、僕とは違い過ぎる……
どうしてそんな簡単に、僕を許す事が出来るの?
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