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「あの、三上先輩……手、離した方が良くないですか?」
「んー、何で?」
「いや、だって……」
この人は気付いてないのだろうか?
隣を歩いている吉野の顔を恐る恐る見上げた真人は、悲鳴を上げそうになるのを必死にこらえながら顔を背けた。
一点を睨み付けながら黙々と歩く吉野の視線の先にあるのはがっしりと繋がれた手の平。
それを見れば馬鹿でも分かるのに……
「……色々と大変ですね」
「まあな」
ニコニコ笑う廉と仏頂面の吉野に挟まれ、何とも言えない居心地の悪さに俯く真人。
校門をくぐると辺りは一気に騒がしくなった。
「廉、俺は先に行くから。帰り……教室で待ってろよ」
優しく笑んでそう言うと、吉野は嬌声をあげ群がる女子達の群れの中へ消えていった。
意外……あんな顔するんだ
いつも無表情な吉野の笑顔に驚く真人。
「相変わらずすごい人気だよね~。あっ、佐々木君も人気だねっ!」
「僕なんか修ちゃ……木田先輩に比べたら大した事ないです」
「あ―……確かに木田はモテるよねえ」
穏やかな微笑み。
どうしてそんな顔出来るのか真人には全く理解出来なかった。心の底に眠るどす黒い感情が芽を出す。
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