第1章 卒業、そして旅立ち

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 キアノスと同じような、簡素な学院生服。だが、ド派手な幅広の赤革ベルトと、ベストを縁取るように縫い付けられた真っ赤なリボンが、振り向いたキアノスを唖然とさせた。 「ごめんなさぁい! まだ前の人いたんだぁ!」  わざとらしく舌を出して明後日の方を向く少女。  間違いようがない。  昨日、キアノスが足を引っ掛けた…… 「あーっ!! ちょっと、そこのあんた! 昨日はよくも乙女に恥をかかせてくれたわね。後で食堂の裏まで来なさい、消し炭にしてやるわ!」  両足を踏ん張って人差し指を突きつける少女に、ヒールの音が迫った。 「……消し炭もいいが、ディナ。お前の時間は午後だったはずだ。それまで、他でなすべき事があったんじゃないのかな?」 「あ、あれ……そうだっけ。まぁいいじゃん!」 「全く呆れたヤツだ、同胞の門出に闖入するとはね!」  整った眉をはね上げて大声を叩きつけるリーンに、ディナという少女は怯む気配もない。 「だってあたしも門出だもん! ねぇ先生、あたし卒業でしょ? ねぇねぇ!」  ぴょんぴょんと踵を上げ下げする度に、真っ赤な髪が背中で跳ねる。  キアノスは両者の顔を交互に見やってそろそろと後退し、部屋の壁際でやり過ごすことにした。
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