45人が本棚に入れています
本棚に追加
キアノスと同じような、簡素な学院生服。だが、ド派手な幅広の赤革ベルトと、ベストを縁取るように縫い付けられた真っ赤なリボンが、振り向いたキアノスを唖然とさせた。
「ごめんなさぁい! まだ前の人いたんだぁ!」
わざとらしく舌を出して明後日の方を向く少女。
間違いようがない。
昨日、キアノスが足を引っ掛けた……
「あーっ!! ちょっと、そこのあんた! 昨日はよくも乙女に恥をかかせてくれたわね。後で食堂の裏まで来なさい、消し炭にしてやるわ!」
両足を踏ん張って人差し指を突きつける少女に、ヒールの音が迫った。
「……消し炭もいいが、ディナ。お前の時間は午後だったはずだ。それまで、他でなすべき事があったんじゃないのかな?」
「あ、あれ……そうだっけ。まぁいいじゃん!」
「全く呆れたヤツだ、同胞の門出に闖入するとはね!」
整った眉をはね上げて大声を叩きつけるリーンに、ディナという少女は怯む気配もない。
「だってあたしも門出だもん! ねぇ先生、あたし卒業でしょ? ねぇねぇ!」
ぴょんぴょんと踵を上げ下げする度に、真っ赤な髪が背中で跳ねる。
キアノスは両者の顔を交互に見やってそろそろと後退し、部屋の壁際でやり過ごすことにした。
最初のコメントを投稿しよう!