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「まったく最後までお騒がせな子だ。とにかく、これをやるから一度自分の部屋に戻りな!」
リーンは箱の山から、キアノスに授けたものと同じような箱を抜き取って、ディナにぐいぐい押し付けた。
ディナの顔から、一瞬笑顔が消える。祈るようにぎゅっと目を閉じて唇を噛むと、キッと箱の蓋を投げ捨てる。
「ぃやったぁ、念願の赤ローブ!! 先生大好き! ありがとう!!」
ディナの両手に掲げられたのは、鮮やかな赤いローブ。しかし、その常軌を逸したデザインにキアノスは再び呆然と口を開いた。
元は幅広の袖と踝まである裾をもち、ウエストをベルトで絞るごく普通のローブだったのだろう。
今、ディナが大きくひと振りで広げたそれは、もはや原型をとどめていない。
裾の左右には腰近くまでの大胆なスリットが入り、前半分がミニスカートのような丈に切り落とされている。ついでに袖も肩口から切り離され、たっぷりとした袖は細いベルトで上腕に固定するようになっている。
あちこちに金のリングが取りつけられているが、一体何に使うのだろうか。しかも、胸元は大きく五角形を描くように開いているのだ。
「どうせお前は、伝統的なローブをやっても着ないだろ? 滅茶苦茶な改造をされる前に手を加えたよ。規定は満たしているから安心しな」
「うんうん、先生ってばわかってるぅ!」
珍妙なローブを抱きしめて頬を擦りつけるディナを、キアノスは思わず見つめてしまった。
(こ、こんな魔術師がいるか!?)
キアノスの開いた口は、どうやら閉じ方を忘れてしまったようだ。
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