45人が本棚に入れています
本棚に追加
ディナは、ふと、高く捧げ持った宝物を自分と恩師以外の目が見つめていることに気づいた。ローブを掲げたままキアノスの方に顔を向け、剣呑な目つきをしてみせる。
「ちょっと、あんたもローブ貰ったんでしょ。何色?」
突然降りかかった災難に、キアノスは喉を詰まらせた。
魔術学院の卒業生は全員、何らかのローブと共に魔術師としての名前を与えられる。ローブの色が規格外だった場合はその名で色を表すことが多いのだが、キアノスはまだ自分の名を聞いていなかったのだ。
「ええと……青、なんだけどちょっと暗くて、なんて言えばいいのかな……まぁ、濃い青なんだけど」
「青ぉ!? うわぁ! あんた、はぐれ……いたたッ!」
すっ頓狂な声を出したディナの頭に、リーンが拳骨を落とす。
「一人前の魔術師に与えられる大切な身の証を茶化す気かい、お前は!」
「違うもん、カッコイイって続けようと思ったんだもん!」
「なにが『もん!』だ。この子は授業で習う共通魔法の技ならトップクラスの秀才だ、私の今期一番の生徒にケチつけるんじゃないよ」
「えー!? 意外~。じゃあ、このヒョロヒョロが今年の主席ってわけ?」
失礼なことをディナは平然と、ついでにものすごく残念そうな顔で言ってのけた。
リーンは引き攣った苦笑いを浮かべて答える。
「いや、色々と事情があってね。主席はお前の組の……」
「わかってる! 魔術師たるもの、《共有魔術(トランシェント)》が少々できるだけじゃダメよね。やっぱ魅力っていうかぁ、魔術師として人を惹きつける言動がぁ……」
「……そうだな、お前のカラッポ頭とお子さまアクションじゃ、どちらもムリだ」
むぅ、とむくれたディナの顏を人差し指でツンと突き、リーンは大笑した。
最初のコメントを投稿しよう!