序章 出会い

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 唸るような爆発音が轟いた。  ビリビリと震える窓の外、心なしか煙って見える広い廊下を、血相を変えた教官たちが走っていくのが見える。 「キアノス! キアノス君、大丈夫!?」  若い女の張り詰めた声が、キアノスと呼ばれた青年の注意を室内に引き戻した。声の出所は、この小さな試験室備え付けの、金属製の伝管だ。 「リーン先生! 僕は何ともありませんが、今のは何です? 外で、すごい音が……」 「無事ならいい、面倒くさいことになるから騒ぎが片付くまでそこから出るなよ! あ、試験の結果は明日だ。腹を括って、正午に私の研究室に来なさい。いいね」  早口でまくし立てる声は一方的に途切れた。カラリ、と金属が擦れる音を聞き、キアノスは慌ててラッパ型の通話口に飛び付いた。 「先生! せんせ……って、参ったな。試験はもう終わりってことでいいのかなぁ」  金属管の先の気配は慌ただしく消えてしまった。  キアノスは小さく溜め息をつき、明るい水色の癖っ毛を掻き揚げて大きく伸びをすると、つい先刻まで“卒業試験”が行われていた部屋を見回した。
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