序章 出会い

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 重い扉を指一本分、もう一本分、と押していく。年代物の蝶番は音もなく滑り、清潔な学院にはあるまじき埃っぽい空気が入ってくる。  キアノスは中腰になり、頭半分だけを外に出して廊下を見回した。これなら部屋から一歩も出ていないと言えるだろうという、屁理屈である。  試験室の外には、同じ造りの部屋が向かいにも左右にも整然と並んでいる。騒ぎはどうやら右の突き当たりの部屋で起きているようだ。  キアノスは、何かを投げつけあっているようなガチャガチャという音に耳を澄ました。 「あのキンキン声はハイ・クラスのレドゥ先生だな。一緒に怒鳴ってるのは試験室管理のおっちゃんで、あの後ろ姿はラクタス先生……げっ、リーン先生もこっちに来てるのか! 大事件だな!!」  見たところ、駆けつけたのは上級の指導者ばかりだ。  五十歩ほど先の騒ぎの中心には、キアノスが寄りかかっているのと同じデザインの重厚な扉がある。しかし、相当乱暴な力によるものか、下半分が引きちぎられたように無くなっている。そして、その奥からすべての混乱を引き裂いて聞こえてきたのは―― 「いぃぃやぁぁぁぁッ!」 「悲鳴!? ……お、女の子!?」
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