序章 出会い

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 彼方で、スレンダーなリーンと恰幅の良いレドゥが仁王立ちになり、揃って腰に両手を当てて大声を上げている。相当腹を立てている証拠だ。  その手前、少女のすぐ後ろからは、風のように身を翻したラクタスが早足で追ってくる。  これは……どう考えても、騒ぎの元凶が逃げ出したようにしか見えない。  ラクタスの無言の直視は、明らかにキアノスに少女を止めるよう命令している。 「え、僕!? うわあ……部屋にこもってりゃよかった」  試験室で目も耳も塞いで、鼻唄でも歌っていればよかったと後悔するも、この状況に至ってしまってはラクタスやリーンの不興をかうのが怖い。  キアノスは今日二度目の溜め息をつき、眼前に迫ってきた少女の真正面から逃れるように一歩退いた。  走り抜けていく少女と、至近距離で一瞬だけ目が合う。キアノスは心の中で謝りつつ、惨事から顔を背け……  さり気なく左足を突き出した。  足首に鈍い衝撃。  少女が、盛大に転倒した。
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