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雨の続く毎日にうんざりしている中、雨の音以外聞こえない家にインターホンが鳴り響く。
「ったく誰だよ。親父はまだ帰るには…早いな」
時計は午後8時前、美咲の父、向井 良和が帰るにはまだ早い。
美咲は椅子から腰を離しドアを開けた。
「今行きますよー」
階段を下り未だ続くインターホンの連打を止めるべく美咲は玄関の鍵を開けた。
すると、美咲がドアノブに手をかける前に突然勢いよくドアが開いた。
ドアの開く力に負け、美咲は尻餅をついた。
「いってえぇ…」
「みっちゃん!」
ドアを開けた張本人、美咲を花びらのように吹き飛ばした張本人、そして美咲の幼なじみである矢吹 梓がびしょ濡れ姿で黒猫を抱え美咲を見下ろしていた。
「お前がドアを開けるな…いてえ…なんだその汚い猫」
「帰る途中で見つけたの…お願いみっちゃん!この猫持ち主が決まるまで預かってて!」
この猫を飼って、と言わないのは梓の優しさなのかもしれないが美咲は少し傷ついた。
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