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ぼっと見つめる僕を彼女は、じっと睨んだ。
「馬鹿!なにがあったか知らないけど死ぬなんて絶対駄目だよ!」真剣な顔で彼女が叫ぶ。
「僕が見えるの?」そんなはずない、僕は確かに透明だった。
「見えるに決まってるでしょ!あんなふらふら屋上に行く人がいたら、誰だって心配するよ!」僕が…見えた?
「馬鹿ぁ…死ぬなんて絶対駄目なんだから」彼女の目から涙が落ちて僕の顔に落ちた。
温かい、僕はその涙を拭おうとして…自分の手がもう透けて無いのが見えた。
「ごめんなさい。」自然に出たその言葉と同時に僕の目から涙が吹き出した。 見知らぬ彼女の目の前で、僕は生まれてはじめて大声で泣いたのだった。
何故だろう?
彼女の涙を温かいと感じた時に、僕はたくさんの事を理解した。
もう…いや、ずっと前から僕は…透明なんかじゃ無かったんだ…。
ただ、ただ僕は…寂しかっただけだったんだ…。
彼女の後ろには、雲一つ無い青い空が広がっていた。
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